好きで、言えなくて。でも、好きで。
「家族、ですか…」



「ああ。だから、今度棟郷が何かしたらぜってー許さねぇ。」


「(賭狗膳さん、目が本気だ…)」




心配しているというよりは、子離れ出来ていない父親、と言った方が正しいと早乙女は思った。



「トクさん、握りこぶしなんてどーしたの?」


「吹蜂さん。」



賭狗膳の行動は謎に見えたようで、話し掛けた威叉奈の顔は不思議そうだ。



ブーブー……ブーブー……



「……………。」



威叉奈の携帯のバイブが鳴る。


着信のようだが、表示を見て一瞬嫌な顔をした後、切ってしまった。



「いいの?」


「いいのー。だって今から会議じゃないですかー。」



そう言って早乙女の背中を押しながら、会議室へ向かう威叉奈。



「(あいつ………、まだ…。)」



威叉奈の一瞬を、賭狗膳は見逃さなかった。



あの顔は、過去に見た闇の目。


賭狗膳には見えた気がした。



警察官を目指して、警察官になって、必死に頑張っている威叉奈を縛る過去からの鎖が。







鎖の先には、一体誰がいる…?
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