好きで、言えなくて。でも、好きで。
「おーりーまーせーんー!しょーこ、みせてあげるんだから。」



「証拠って、おま…………」



お前、何をする気だ。


棟郷は、そう言いたかった。




でも、言えなかった。


いや、言うことが出来なかった。



何故なら、威叉奈にキスされていたから。



「ばっ…………何を………」



「えへへ―、ちゅーしちゃったぁ―。とーごーさんと、ちゅーしちゃったぁー」



そう言って、ニッコリ嬉しそうに笑う威叉奈。



「とーごーさん、だぁ―いすき。」



「吹蜂……!………はぁ。」



言うだけ言って、キスまでして。


なのに、コテンと力尽きた様に、威叉奈は眠ってしまった。



棟郷の気持ちを置き去りにして。



「ったく………勘弁してくれ………」



酔っぱらってやられては、こっちの身が持たない。



しかも、普段とは180度違う威叉奈の態度。


調子が狂うどころか、振り回されてしまった。



それでも、威叉奈に対して嫌な気持ちは一つも起きず、とりあえず風邪をひかないようにと、きちんと布団に寝かすのだった。
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