カタブツ上司に迫られまして。
「お前は何でこいつに飲ませてんだよ」

課長が睨んで、原本さんが微妙な顔で笑う。

「まさかこんなにすぐ酔っぱらうなんて、さすがに思わないじゃん?」

「初めて誘った相手にくらい気を使え」

課長に何か言われる筋合いはないんだけど。

「私は酔っぱらっていません! まだ2杯しか飲んでないですもん!」

だけど、課長は顔をしかめて振り返る。

「そもそもお前は弱いんだから、せめて何か食ってから飲め!」

「弱くないですもん! だいたい課長と飲みに行くなんて会社の飲み会でしかないでしょう! それだけで何が解るって言うんですか!」

「いつも新崎が気にして、烏龍ハイを烏龍茶にしてた事は知ってる」

烏龍ハイを烏龍茶……?

「知らないです! 私は飲めます!」

「飲めねぇから言ってんだろうが。お前は潰れたから覚えてねぇかもしれないが、歓迎会の後も大変だっ……」

課長が唐突に口を閉ざして、呆れた顔の原本さんを見た。

「なんだ、両想いじゃん。つまんないなー」

「まだちげぇよ。だいたいお前は何を考えてんだよ!」

「何って、まぁ、引っ掻き回したら面白そうだなーと思って」

にっこりと言う原本さんに課長がポカンとして、それからちらりと私を見た。

「いいか、鳴海」

「なんですか?」

課長は真剣な顔で原本さんを指差す。

「これが真性のSだぞ?」

……何を言うんだあんた。

「ひどいなー。でも、いいか」

含み笑いをする原本さんに、私と課長は顔を見合わせて、それから眉を潜めてまた彼を見た。

「悩め悩め、リア充爆発しろ」

貴方も爆発してください。
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