ラブエンゲージと甘い嘘
しばらくすると「あ、いいこと思いついた」と言い、くるっとこちらを振り向いた。

目の前にいる男の綺麗な顔が、ニヤリと笑う。その表情に、嫌な予感しかしない。

思わず後ずさる私に、意地悪としか表現できないような顔でその男が言い放つ。



 
「お前さぁ……俺と結婚しろよ」




満面の笑みで言い放った男の顔が、大きな窓から差し込む夕日に照らされてキラキラとまぶしい。

「……あはは、あははっ!」

私は声を出して笑った。とりあえず。正直そうすることしか出来なかったのだけど……。

「なに、楽しそうだな。よかった俺の提案受け入れてくれて」

ニンマリと笑って、私に一歩近づいた時に私は我に返る。

「……ないデス!受け入れてなんてないです! 冗談だと思って笑ってあげたのに」

「あげた?」

男の冷たい視線が私に刺さる。まずい。これ以上怒らせるのはよくない。バカな私にでもそれくらいはわかる。

「すみません。でも……私、最初に言いましたよね?“私できることなら”って」

声が大きくなる。自分の人生がかかっているんだから仕方ない。
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