深愛なる君へ、この愛を捧げます。
1話『日常となってしまった日常』




梅雨明けが近付いた7月。
今日も私は、仕事に明け暮れる。




「710円のお釣りになります。ありがとうございました」




お客様にお釣りを渡して、深々とお辞儀をする。




カランカラン…
ドアについた鈴が静かな店に鳴り響く。




お客様が見えなくなると、すぐに店の前に『closed』と書かれた看板を置く。




そしてすぐに更衣室に向かいながらお団子にしていた髪をほどいて一つに縛り、更衣室で店のユニフォームからシンプルな私服へと着替える。




更衣室から出て厨房へ行けば、調理台の上には既に袋が置かれていた。
その袋を受け取り車の鍵をもって裏口から出ると、プカプカ煙草をふかしている女性(ひと)が一人。




「…いつもありがとうございます、お義母さん」


「いつもお礼なんて言わなくていいから、早く行って、早く帰ってきな」




お義母さんの辛口に苦笑いしながらも小走りで車に乗り込み、店を後にする。



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