深愛なる君へ、この愛を捧げます。
3話『いつまでも君を愛し』




夏の暑さもより一層厳しくなってきた、7月。




「…あっつ…」




稼働させていた掃除機を止めて、額の汗を拭う。
掃除機を止めると、掃除機の騒音でかき消されていた蝉の鳴く声が聞こえる。




蝉の声と風に揺れる風鈴の音が、夏であることを証明している。




今日は店は定休日。
この店はお義母さんとお義父さんが趣味でやってるためか、定休日が月2回というかなり忙しい店。




だから月2回の定休日に店と家を一斉清掃している。
ちなみに私は家担当。




お義母さんとお義父さんは店担当。
店よりも家の方が大きいのに家の掃除が私一人なのは酷いのでは…と言いたいけど、住まわせてもらっている分際でそれは言えない。




お義母さんもあの怖さだし。
かといってお義父さんに助けを求めても、お義母さんには口出せないお義父さん。




よく母は強しって言うけど、まさにこのこと。




とりあえず広い順にリビングと和室、キッチンを終えた。
広い部屋を終えれば、あとは自分の部屋のみ。




各自分の部屋の掃除は、自分でやるのがこの家のルール。




掃除機を持って自分の部屋に向かおうとすると、店の掃除をしていたお義母さんが顔を出した。




「あとは自分の部屋だけかい?だったら理人の部屋も掃除しといておくれ。
父さんが小麦粉ぶちまけて、こっちは大変なことになってんだ」




私も手伝いますか?
そう言う前にお義母さんは、店の方に戻って行ってしまった。




店の方から「ったくアンタはヘマばっかすんじゃないよ!これ以上やったら夕飯抜きだからね!」というお義母さんの怒鳴り声が聞こえた。




厨房のことはよく知らない私が手伝いに行っても、お義父さんのようにヘマしそうだったので、夕飯抜きにならないように私は再び掃除機を持って理人の部屋に向かった。



< 20 / 60 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop