俺様紳士の恋愛レッスン
「な、なに言って……」

「アイツが倒れた時、エンがいてくれて正直助かった。その礼も兼ねてな」

「いや、そうじゃなくて……」

「本当は別れたいんだろ?」



背筋がピクリと震えた。

その声が、急に優しくなるから。


私は忘れていた呼吸を一つつき、止まりかけていた涙を一粒落とす。



優しい声は、私を誘導するための道具に過ぎない。

それでも、バカな私はまんまと釣られて、震える唇を従順に動かす。



「……別れ、たい……」



私の答えを聞いた十夜は、意地悪く、とても満足そうに、笑った。



「契約成立だな」

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