俺様紳士の恋愛レッスン
「エン」

「全部十夜の言うとーり! 私こそ時間を、無駄にッ……」

「エン、聞け」

「やだ! 聞かない!」

「おい、こっち向け」

「こんな顔見せられるわけ」

「エン」



トン、と頭上で音がした。

同時に、清涼な香りがふわりと舞った。


顔を上げると、目の前の窓枠には十夜の手が添えられていて、振り返ると、綺麗な顔が覆い被さるように寄せられていた。



「エン」



ドクンと心臓が音を立てる。

身動きを奪われた私は、ほぼゼロ距離にある瞳を見つめた。



「救われたいなら俺を買え」



囁かれる声は、低く強く。



「教えてやるよ。お前にとっての正しい幸せが何なのかを」



やがて暗がりの中に、妖艶な微笑が浮かんだ。

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