俺様紳士の恋愛レッスン
「エンちゃん、この人なの?」



苦さを押し殺したタカちゃんの声に、ビクリと肩が跳ねた。


何か言わなきゃと口を開くけれど、乾いた喉は貼り付いて、音が出ない。

みるみる不快に変わっていく鼓動の所為で、十夜の背広を掴む手は震えだす。



「篠宮さんは悪くありません。強引に言い寄ったのは俺です」



私の肩を掴む手に、グッと力が込められた。

まるで、黙って俺に任せとけ、とでも言うかように。



「僕はエンちゃん本人から聞きたい」



それでもタカちゃんは少しも引かず、再び私の名を呼ぶ。



すると、肩に伝わる十夜の力が緩められた。


ゆっくりと解(ほど)かれる体温に、恐る恐る顔を上げた私を、十夜は微笑みながら見下ろす。

「お前の口で伝えろ」と促す、実直な瞳に背中を押され、私は意を決して振り返った。

< 214 / 467 >

この作品をシェア

pagetop