俺様紳士の恋愛レッスン
「じゃあ、ひとまず家に帰ろっか、エンちゃん」

「あ……うん」



ちらりと後ろを振り返ると、十夜は変わらず細めた目でタカちゃんを見据えていた。

何か言わなければと口を開いた瞬間、十夜はふっ、と小さく笑う。



「そういえば名乗っていませんでしたね」



そう言って、タカちゃんへ一歩歩み寄る。

ピリッとした緊張を感じた私は、慌てて止めようと手を伸ばすけれど。



「片柳十夜と申します」



流れるように差し出されたのは、見覚えのある真白の名刺。



「何かありましたら、どうぞ遠慮なくご連絡下さい」

「……住本貴幸です。生憎、名刺は持ち合わせていませんが」



互いに微笑み、会釈をする。

一見すると和やかな光景には、限りなく不釣り合いな緊迫感が充満していて、私はゴクリと唾を飲んだ。

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