俺様紳士の恋愛レッスン
「では、俺はこれで」



踵を返した十夜と目が合った。

ほんの一瞬、何かを思案するような間の後、十夜はニヤリと悪い笑顔を浮かべ、私の頭にポンと手を乗せると。



「オヤスミ、まどか」



甘い色を耳元に落とし、颯爽と横をすり抜けていった。



「まッ……!?」



強烈な一撃に、くらりと目眩を起こしそうになる。


絶対にわざとだ。

わざとタカちゃんに聞こえるように、私の名前を呼んだのだ。


何考えてんのよバカ十夜!と言いたくなるのを必死に堪え、闇に消えていくチャコールグレーの背中を見つめた。

こんな真っ赤な顔ではタカちゃんの方を振り向けないと、頬を抑えようと手を上げて、ふと片手に握り締めたオレンジジュースの缶を思い出す。

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