俺様紳士の恋愛レッスン
「……誰?」



次第に襲ってくる、焦燥。



「誰、誰!?」



慣れ親しんだ通路の先に続くのは、同じく慣れ親しんだオフィスの一室。



「ねぇ!」



その扉を押し破るように、駆け込んだ。



「エン、どうしたの?」

「いま超絶イケメンとすれ違ったんだけど!」

「えっ? あぁ、あの人新しい担当さんだって。さっきもらった名刺がここに……」

「貸して!」

「あっ! ちょっとエン!」



抱えた紙束をデスクに放り投げ、同期の手から真白の紙を奪い取ると、食い入るように顔を寄せる。



「株式会社RAPAC……」



左から、右へ。



「人事コンサルタント」



一文字も取りこぼすことのないように、呟く。



「KA、TA――――かたやなぎ、とおや」

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