俺様紳士の恋愛レッスン
記憶を呼び起こしながら、名前と顔をリンクさせる。


すれ違ったあの瞬間、あの姿。

幻かと思った。

ストップモーションの世界に思えた。



「確かにイケメンだったけどさ、エンがそこまで騒ぐの珍しいね」

「だって、ドンピシャ過ぎて! てか今帰っちゃったってこと!?」

「うん。でも――」

「追ってくる!」

「はっ!?」



夢中でオフィスを飛び出した。

私を引き止める声なんて、これっぽっちも届いていなかった。


通路の先に見えたエレベーターの表示が1であることを確認して、迷わず階段を選ぶ。

ここは4階。走ったほうが早いと判断したのは、もはや本能にも近しい域。

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