俺様紳士の恋愛レッスン
ひととせ

無期限の契約(ヤクソク)を

「篠宮! 早くしろ!」

「すみません! 今行きます!」



厚手のチェスターコートを取り出し、後ろ手にバン、とロッカーの扉を閉めた。



「今日は3店舗回るからな。腹は空かせてるな?」

「もちろんです! もうぺっこぺこです!」



すっかり見慣れた上司の黒い背中を追って、オフィスを出た。

通路に出た途端、ブルッと身震いする寒さに包まれて、慌ててマフラーを巻き付ける。



「1件目の店はクリスマス施策のスイーツが当たって、相当集客を上げているらしい」

「私も女性誌で取り上げられてるの見て、美味しそうだなーって思ってたんです!」

「おい、仕事だということを忘れるなよ」

「あはは。分かってます!」



エレベーターを降りて外へと出る。

褐色に染まった街路樹は、今日も乾いた音を鳴らし、侘し気に肩を並べている。

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