キミが笑う、その日まで
肯定されるかと思っていたけど、如月は首を横に振った。
「いや、違うスよ。
11年前、こっちに引っ越してきたんスよ」
「11年前?
あたしが引っ越す1年前に引っ越してきたの?」
「そう」
「そうなんだ。
やっぱり親の仕事の都合?」
「……そうスね」
「やっぱり親の仕事の都合だよね~。
ま、忙しいからしょうがないんだけど」
「……そうスね」
苦笑したところで、再び前を見る。
前を歩くふたりが、楽しそうに話していた。
…やっぱりお似合いだな、あのふたりは。
「…まだ好きなんスか?キクのこと」
「うん、好き。
だけど、もう良いかなって思っていたりもする」
「…諦めるんスか?」
「うん…。
諦めたくはないけど、真帆には敵わない気がするんだ」
「そうやって最初から戦いもせずに諦めるんスか?」
「だって真帆には敵わないよ。
可愛いし美人だし、明るくて性格も良いし…」