好きだからキスして何が悪い?
「僕とも仲良くしてね、菜乃ちゃん」


耳元でそんな言葉が響いたかと思うと。

──ちゅっ。

という小さな音と、左の頬に柔らかくて温かな感覚がした。


一瞬のことで、すぐには何が起きたのかわからず硬直する。

なに、この体験したことのない感覚……今の、唇?

てことは、まさか……キスされた?

ほっぺにチュウ!?


「~~~っっ!?」

「あは。真っ赤になってるー」


声も出せず、頬を押さえてバッと離れる私を見て、早水くんはのほほんと笑っている。

熱い! ほっぺが熱い!

いいいきなりギュッてされてチュッてされるなんて……妄想女子には刺激が強すぎますーっ!!


ぷしゅ~っと頭から湯気を出して砕けそうになっていると、早水くんの後ろに影が近付いてきた。

彼の肩に手を掛けてぐいっと引っ張る如月くんは、いつもに増して不機嫌そうな顔をしている。


「そういうのやめろって言ってんだろ」


低い声で吐き捨てる如月くんを、早水くんはぱちぱちと瞬きして見つめる。


「……なんか怒ってます?」

「別に。ただ、お前の行動が見苦しいだけ」

「Why!? これ普通の挨拶じゃん」

「ここは日本なんだよ! 郷に従え」

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