好きだからキスして何が悪い?
『あの、ソウくん、ですよね!?』


店長しか言わない名前を口にされて、一瞬固まってしまった。

……が、本屋に来た時に聞いていたのか、と昨日のことを思い出す。

こんなふうに聞いてくるなんて、コイツはただの地味女じゃないのかもな。


俺が“ソウ”という男だと信じ込んでいることが面白くて、別人を演じてみた。

教室に戻るとさっそく藍原とその話をしていたから、なんとなく聞いていたのだが……


『三次元のイケメンは想像よりずっと刺激的で、どうやら私はM属性らしいってこともわかったし!』


そんなことを言うから、思わず吹いちまったじゃねーか。

まぁ、お前がMじゃなきゃ何だって感じだけど。



この日の出来事があってから、俺の中で冴島 菜乃のイメージが変わりつつあった。


クラスマッチをやった時は、『バスケ、すごくカッコよかったよ』なんて、あんな地味でダサい俺に目をキラキラさせて言ってくるし。

パープルの奴らに絡まれた時も、ビクビクしてたくせに『私を殴ってください!』なんて言うし。

とにかく変わっていて、すげぇ素直なやつなんだよな。

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