好きだからキスして何が悪い?
そうじゃないかなとは思っていたんだ。

琉依くんは優しいから……。


「でも、もしかしたら今日のメイクしてる菜乃を見て気付いたのかもよ?」


文ちゃんは私の顔をちょんと指差して言った。

実は今日、『皆がいるとはいえ、せっかく如月くんと会うんだからメイクくらいしてきな』と押し切られて、なんとか自力でやってみたのです。


文ちゃんからオススメされた繊維入りのマスカラを付けたら、その繊維が目に入っちゃったみたいで、練習中痛かったなぁ。

そうしたらあのアクシデントが起きて、私はひとり心臓をバクバクさせていたのだ。

如月くんにしてみれば、迷惑きわまりなかったはずだけどね。


あの時眼鏡を外したから、それで気付いたってこともあるかもしれない。けれど。


「んー……でもいつ気付いても、気付かなくても一緒だよ。如月くんに想われる日なんて、一生来ない……」


そこまで言って、またぶわぁっと涙を溢れさせる私の肩に、文ちゃんはため息をつきながら手を置いて言う。


「あたしにはまだ希望があるように思えるんだけどなー……」

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