好きだからキスして何が悪い?
わずらわしいほど胸がざわつくのを感じながらも、何も言うことができない。

テーブルから手を離した琉依は、「じゃあね」と短く言うと、静かに部屋を出ていった。


パタン、と玄関のドアが閉まる音が聞こえる。

ひとり残された俺は、椅子の背もたれに力無くもたれ掛かり、大きなため息を吐き出した。


俺にどうしろって言うんだ……。

アイツも琉依のことが好きで、俺が出ていったってふたりがくっつくのは決まっていることなのに。

それでも、諦めたくない気持ちをつらぬけって言うのか?


そんなの、ただの自己満足としか思えない。

琉依との友情も壊れかねないだろ。

でも、決して今のままでいいわけじゃない。それだけはわかる。


「どうしたらいいんだよ……」


答えを出せそうにない問題に、俺は頭をくしゃくしゃと掻き乱した。

あんな地味で変な女とのことで、こんなに悩まされるなんて。

いつの間に俺は、これほど強くアイツのことを想うようになっていたんだろう──。


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