好きだからキスして何が悪い?
本を探すフリをして如月くんの姿を探す。

今の私は、ソウくんがいるかどうかということは頭から抜けていて、如月くんのことばかり考えていた。

……しかし。


「あれ?」


どこにもいない。

狭い店内だから、見当たらないはずないのだけど。


不思議に思いながらキョロキョロと見回していると、レジの奥にあるドアが開く音がした。

反射的にそちらを向くと、黒いTシャツに店長さんと同じエプロンを付けた、今日も麗しいソウくんが登場。

私に気付いていない様子の彼に、店長さんが話し掛ける。


「じゃソウくん、さっそくこれ出してくれる? そしたらビニール掛けてもらって~」

「はい。それはいいんですけど、店長……」


たくさんの本が入った段ボール箱から顔を上げた店長さんに、ソウくんは無表情でこんなことを口にする。


「俺の名前、“ソウ”じゃなくて“カナデ”だって言ってるじゃないですか」


…………え?

“ソウ”じゃなくて“カナデ”?

か、奏!? ってまさか……!


「ごめんごめん。わかってるんだよ~君の名前は如月奏くんだって。でもソウくんって呼びやすくてなぁ」

「ぅえぇぇーーっ!?」

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