好きだからキスして何が悪い?
そっか、本屋さんに用があったのか。

……あ、本のことなら何か話題が見付かるんじゃない?

たぶん私、人より本は読んでると思うから、彼とも話が合うかも!


電柱の陰に隠れて、そんなポジティブなことを考えた私は、よしっと気合いを入れて一歩踏み出した。

偶然を装って、自然に自然に……

……って、あれ? そういえばまだ開店前じゃない?

ここの本屋は午前十時に開店だったはず。


お店のドアに近付いて中を覗くと、案の定まだ中にお客さんらしき姿は見えない。

でも、如月くんはたしかに入っていったよね……。

不思議に思いながら怪しい動作で中を覗いていると、私に気付いた店長さんがやってきた。


「菜乃ちゃん、いらっしゃい! 今日はえらく早いねぇ」

「えへへ。ちょっと……」


気になる男子を追ってきちゃいました

……とは言えず、ぎこちなく笑う私。

でも店長さんは特に気にせず、「もう開店になるから入っていいよ」と、快く入れてくれた。

もしかしたら如月くんも同じように入れてもらったのかも。

そう思いつつ、店長さんにお礼を言って、ドキドキしながら足を踏み入れた。

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