好きだからキスして何が悪い?
ほんの少し眉をひそめていると、店長さんはごまみたいな髭が生えた顎を撫でつつ、さらに付け加える。


「それに、今日は駅の方でお祭りがあるからな。だいたい祭りの時は不良があちこちにたむろするんだ」


あ……そういえば、美紅が友達とお祭り行くって言っていたんだった。

『危ない人達もいっぱいいるから気をつけなさい』って、お母さんも再三注意してたっけ。

私には関係ないことだからと、あんまり気にしていなかった。けれど。


「私なんかに絡む人なんていないから大丈夫ですよ! それに、さっきメールが来てておつかい頼まれちゃったんで」


軽く笑い飛ばす私。

お母さんから“洗濯洗剤買ってくるの忘れちゃったから、帰りにお願い!”ってメールが来ていたんだよね。


如月くんに送ってもらうとなると、お店に寄るのまで付き合わせなくちゃいけない。

そんなことはさせられない、と強く思うけれど、店長さんは表情を険しくするばかり。


「何言ってるんだい! 女の子なんだから、何があるかわからないんだよ?」


あぁ、店長さん……私を女の子扱いしてくれるのはあなただけですよ!

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