とりあえず、殺そうか
プロローグ
「ああ~熱ちい」そんな言葉を漏らすのは一人の男。藍沢慧である。       この季節は慧にとっては苦手な季節の一つであった。 「よし!こんなときはあえて運動しよう」 こいつバカである。     「そうと決まればしゅっぱーつ!」 ソファーから起き上がる。 汗でシャツが張り付くのもきにせず慧が向かったのは倉庫。ドアを開き中に入る。 「えーっと、今回はどれがいいかな~」そう言った慧の目の前に広がるのは、大量の武器だった。 「うーんと今回は、オーソドックスにこいつでいこう」 慧が手に取ったのはサバイバルナイフ。チラッと時計を見る。 「今7時だからー、10時までには終わらせよっと」 そう呟いた少年の目は暗く淀んでいた。                      ーーーーーーーーーーーーーーーーーー                    「この辺でいいかなぁ」       都内某所、廃ビルの一階に慧は隠れていた。  携帯の電源をつける。 7時35分 時間はまだ2時間以上ある。そして足音が聞こえてきた。 こういった廃墟には稀にだが訪問者が来る。「うわぁ、雰囲気あんなぁ」「やっぱりやめようよ…」「香奈は怖がりだからなぁ」 「大丈夫だって香奈、ほらいざとなったらこいつらが助けてくれるから」 男女4人のグループ。 工藤達巳 斎藤誠 田中美帆 森口香奈 慧のクラスメイトであった。 この廃ビルに肝試しに来たのだ。 慧が昼間、高校の教室に居たときこいつらはでかい声で「肝試しいかね?ほらあの出るって噂の」「えぇーまぁ美帆は、別にイイケド」「俺も行くわ」 「えっとえっと」「大丈夫だって」 という会話が聞こえてきた。 ちなみに慧は、この間机に突っ伏して寝たふりをしていた。 ボッチである。 そんな訳で慧はクラスメイト四人が今日この廃ビルに来ることを知っていたのである。 「とりあえず奥に進んで見ようぜ」 声が聞こえる。 このビルは5階建て やるなら一人づつ そう心に言い聞かせ慧は動いた。最後の一人が階段を登った。 音を立てないように後をつける。完全にストーカーである。 二階に顔だけ出すと四人の姿があった。何か話してるみたいだが何故か上手く聞き取れない。 視界が霞む。体が思うように動かない。 「何だこれ…」 四人に聞こえないよう蚊の泣くような声で呟く。 ヤバい何でだ?今までこんなこと無かったのに。 そして耳元で声が聞こえた。 「やっと見つけたぁ」 次の瞬間、視界が暗転した。 「何が起こった?…」 そこは一面白の世界だった。 さっきまでいた廃ビルとは似ても似つかない。 そして不意に後ろから視線を感じた。振り向く。 そこには頑丈そうな椅子に座った"人間"がいた。否それは正確には人間では無かった。その人間のようなものには巨大な角が生えていた。 「やぁ、初めまして僕は"悪魔"だ」非人間宣言された。 「俺に何のようだ?」強気な口調で言うが足がガクガクしてる。 常に格下の相手を殺してきた慧にとって目の前の存在は自分の人智を越えていた。 殺される…! 「君が欲しい」そう悪魔は呟いた。 足の震えが止まった。 今こいつ何と言った? 君が欲しい? 頭に一つの可能性が浮かび上がる。 「お前ホモか!」 つい叫んだ 「HAHAHA違うよ」 欧米風の返しをされた。意外と良い奴なのかもしれない 「単刀直入に言うと君に御願いがあるんだよ」 「俺に?」 「あぁ、そうだ君に異世界に行ってもらいたい」 異世界 異なる世界と書いて異世界。 「いったいどう言うことだ?」 「君には異世界で僕の存在を広めて欲しいんだ」
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