笑顔の裏側に
顔を上げて先生の寝顔を見つめる。

穏やかな表情で眠っている。

好き---。

そう心の中でつぶやく。

でももし先生があのことを知ったら軽蔑するだろうか?

離れて行ってしまうだろうか?

また私は誰かに嫌われるの?

そんなことばかりが頭の中を駆け巡る。

信じてないわけじゃない。

でも不安でたまらないのだ。

やっぱり話すのはやめよう。

今まで通り隠し続ければいい。

そしたら、私に幻滅することなんてないだろう。

そう思ってもう一度机に伏せた。

その後、物音で目が覚めた。

何だろう思って顔をあげると、コップが床に落ちていた。

きっとぶつかって落ちたのだろう。

中身が空で良かった。

コップを拾うと、ヒビが入っていた。

不気味なほど真っ直ぐな線を描いている。

しかも奇跡的に割れていない。

何だろう。

この変な胸騒ぎは。

きっとびっくりしただけ。

そう思ってヒビの入ったコップを片付けた。

もうすぐに近づいてきている惨事に気づかずに…。
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