笑顔の裏側に
でも夜になれば悪魔は再び蘇る。

今すぐにでも逃げ出したい。

こんな風に思ってしまうのはきっと先生の優しさに触れてしまったせい。

いつもならどこか諦めているところがあった。

でも今は助けてくれる人がいる。

お母さんの暴力から守ってくれる人がいる。

それだけでこんなにも弱くなってしまうなんて。

しっかりしないといけないのに。

「麻生…麻生…麻生?大丈夫か?」

先生の声が聞こえて、ハッと我に返る。

ぼんやりとしてしまった。

「大丈夫です。」

そう言ってスッと立ち上がる。

本当は大丈夫なんかじゃない。

夜のことを考えると、怖くて体が震える。

でも耐えるしかない。

私にはそれしか選択肢は残されていない。

そして家事の続きに戻る。

でも頭の中ではさっきのことが何度も再生される。

先生に完全にバレてしまった。

どんなに弁解したとしても、あの平手打ちが全てを物語っていた。

今まで私が積み上げてきた嘘が水の泡。

そして私の今まで作り上げてきた人物像が音を立てて崩れていく。

きっと軽蔑されて嫌われた。

私は初めて愛してくれた人までもこんな形で失ってしまうんだ。

私は誰にも心から愛してもらえないのかもしれない。

そんなことばかり考えていると、次第に視界が滲んでいく。

泣いちゃいけない。

いつからこんなに弱くなった?

今までだってずっと一人で耐えてきた。

だから何も変わらない。

そのはずなのに…。
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