笑顔の裏側に
「麻生、入るよ?」

そんな中、今一番そばにいて欲しい人の声が聞こえる。

どうして?

どうして私に構うの?

いっそのこと冷たく突き放してよ。

甘えてしまう。

期待したくなってしまう。

「来ないで!!」

でも先生は気にせずズカズカと入ってくる。

そんな様子の先生に私はそのまま続ける。

「軽蔑したでしょ?嫌いになったでしょ?だったらもうこれ以上優しくしないで!!」

大声を出すと咳が出てまた流しに向かう。

どんなにひどいこと言っても、先生は何も言わずに背中をそっと撫でてくれた。

その手を振り払えるだけの体力は今の私には残ってない。

「麻生、病院に行こう。」

さっきの言葉が何もなかったように静かに先生は言った。

私は咳き込みながら先生の方を見ずに首をふる。

私は病院には行けない。

医者の子供が自分の体調管理も十分にできないという情けなさをさらけ出し、そんな子供を置き去りにしている医者というレッテルを貼られる。

私の居場所は家にも病院にもどこにもないのだ。

次行ったら何されるかわからない。

そんな記憶が蘇ってくるが、私はそのまま床に座り込む。

体に力が入らない。

さっきだって立っているのがやっとだった。

「辛いだろ?」

私は小さく首をふる。

先生は何も言わずに私を抱き上げるが、私はそのまま意識を手放した。
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