笑顔の裏側に
「だから私は…あえてずっと…突き放すような言い方をしたんです。どうしても…先生に知られたくなかったから…。でももうきっと…全部知られてしまいました。私はもう…先生に嫌われて…軽蔑された…。」

自分で言っていて悲しくなってくる。

もう優しく声をかけられることもない。

抱きしめられることもない。

そう思うと辛かった。

「愛先生?」

「うん?」

愛先生の優しい声が余計に涙をそそる。

「私…、私…、どうすればいいですか?私はもう…先生の優しさに触れることができないのに…、自分でもこんなにも…先生の存在が大きくなってるなんて知らなかった…。」

そう言うと私は声を上げて泣き出した。

抑えてきた気持ちが一気に溢れ出る。

「優美ちゃん…。」

そんな私をそっと愛先生が抱きしめてくれる。

先生から離れたくない。

ずっとそばにいてほしい。

だけどそれを壊してしまったのは私自身で。

もうどうすることもできない。

少しずつ気持ちが落ち着いて、顔を上げる。

「落ち着いた?」

「はい。ありがとうございました。」

最近泣いてばっかりだ。

きっと人の優しさを知ってしまったからだ。

「だってよ、歩。そこで立ち聞きしてないで堂々と入って来なさい。」

愛先生がドアに向かって叫んだ。

その言葉に私は驚きを隠せずにいた。

嘘でしょ?

全部聞かれてたってこと?

ゆっくりと先生がドアを開けて入ってくる。

「麻生…。ごめん…。」

「さあ、私の出番はここまで。あとは二人でしっかり話しなさい。」

愛先生は軽快な足取りで診察室を出て行った。

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