笑顔の裏側に
昼休み。木下さんに呼び出された。

その時点で怪しいとは思っていた。

話があると言われて連れてこられたのは屋上。

木下さんはフェンスの方に行き、空を見上げながら言った。

「麻生さんはいいよね。頭も良くて先生たちからもすごく期待されてて。羨ましい。」

いきなりそんなことを言われ、なんて返すか迷った。

ここで下手に否定しても彼女の神経を逆撫でするだけだ。

学年1位にそんなことないと否定されても嫌味しか聞こえないだろう。

それくらい自覚している。

「それで話って何?こんな話じゃないでしょ?」

本題に入るように促す。

「さっすが、麻生さん。よく分かってるね。というより心あたりがあるっていう意味?」

彼女がこちらへ歩いてきて、私の前に真っ直ぐ立つ。

心当たりとは一体何のことだろうか?

「言っている意味が分からないんだけど。」

「まあいいわ。率直に聞くけど、麻生さん、瀬立先生と付き合っているの?」

その問いかけにドキリと心臓が嫌な音を立てた。

手に汗がじわりと滲み、隠すようにギュッと握った。

「何のこと?私は付き合っている人なんていないけど?ましてや先生だなんて?」

あり得ないということを全面に押し出す。

「とぼけないでよ!この写真を見ても、同じことが言えるわけ?」

感情的になった彼女が差し出したスマホを受け取る。

そしてそれに目を向ければーーー。
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