笑顔の裏側に
その間にと、静かにドアを開けて寝室を抜け出す。

洗面器を借りて、水を汲んで、部屋に戻る。

その時もまだ先生は熟睡していた。

それを確認すると、もう一度部屋を出て持って来た荷物を全て寝室に運ぶ。

荷物がドアにぶつかってしまって、ドキッとしたけど、先生が起きる気配はなく、肩から余計な力が抜けた。

これでもう大丈夫。

もう部屋を出る必要はないだろう。

息を大きく吐き出して、看病に取り掛かる。

まずタオルを濡らして、先生の首や額の汗を拭いた。

そして悪いとは思ったが、勝手に体温計を挟ませてもらった。

先生が起きないかヒヤヒヤしたが、これも何とかクリアした。

少しすると体温計が鳴ったので、抜き取って表示を見ると、38.7度。

思った通り、高熱だ。

同時にこんなになるまで、無理をさせたんだと後悔した。

無理していることに気づいていながら、私は何もしなかった。

むしろ気づかないふりをしていたも同然だった。

熱に浮かされて、呼吸が荒く、苦しそうな様子に胸がギュッと掴まれたように痛む。

私は先生が起きるまで、何度もタオルで汗を拭き取り、そっと手を握って、早く良くなることを願った。
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