笑顔の裏側に
向き合うように座らされて、手首を固定されて、もうダメだと思った。

目を合わせるように覗き込まれる。

「いつから眠れてないんだ?」

その問いかけに短く息を吸い込む。

これじゃあその事実を認めてしまったようなものだ。

どうして気づかれてしまうんだろう。

これ以上心配や迷惑はかけたくないのに。

「質問を変える。さっき魘されてたのと沙織さんは関係しているのか?」

まんまと言い当てられ、ドキリとしてしまう。

「やっぱりか‥。」

まだ何も言ってないのに、全部見透かされてる。

眠れないことも。

その理由も。

あの日の夜から、毎日お母さんが夢に出てくるようになった。

怒鳴られ、存在を否定されてきた数々の言葉とその光景が夢の中で再現される。

そして私を残して出て行く光景を最後に飛び起きる。

それにより眠りは浅くなり、眠るのが怖くなった。

「悪いけど、今日も泊まるな。」

「え?」

突然の話の内容にさっきのことなんて忘れて顔を上げてしまう。

「今日は一緒にベットで寝よう。」

「ちょっと待って‥。」

話の流れが読めず、困惑する。

「安心しろ、何もしない。」

それっきりこの話は終わりと言わんばかりに私をソファーに残したまま、キッチンに行ってしまう。

慌てて追いかけるけど、休んでろの一点張りだった。

結局夕食は悠が作ってくれて。

そのまま順番にお風呂に入って、2人同時にベットに入る。

「ずっと隣にいてやるから、安心して寝ろ。」

優しく頭を撫でられ、徐々に瞼が重くなった。

「ねえ、ギュッてして?」

甘えるようにくっつけば、嫌な顔一つせずに受け入れてくれる。

そうして私はゆっくりと眠りに落ちていった。

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