笑顔の裏側に
「何でよ‥。何でそんなこと言うの?」

「お前が一番よく分かっているだろ?このままじゃダメだってこと。」

そう言われて、抵抗するのをやめるように腕を下ろした。

「いきなり強引に連れ出したことは悪いと思ってる。だけど行き先を告げたらお前は絶対来ないと思った。だからこうするしかなかった。」

その表情はどこか苦しそうで。

悩みに悩んで出した結論だったのだろう。

私が拒否するのを分かっていたから。

「お前が不安な時や辛い時は、そばにいてやれる。いくら心配かけたって構わないし、どんなお前であろうとも絶対に見捨てたりなんてしない。一生お前を愛していく自信だってある。だけどな。」

悠は一度言葉は区切った。

何となく次の言葉が予想できる。

聞きたくない。

悠が私のためを思って言ってくれていると分かっていても。

変わるのが怖かった。

もう傷つきたくなかった。

「お前が今でもずっと求めている愛情を俺は与えてやることができない。母親の代わりは誰にもきかないし、お前の心の隙間を埋めることができるのは沙織さんしかいないんだ。」

絶対泣かないと決めていたのに、気づけば涙が頰を伝っていた。

泣いてしまえば、悠の言葉を肯定することになる。

母親からの愛情に飢えていると認めてしまうことになる。
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