笑顔の裏側に
「絶対に別れません。」

その言葉に越川先輩が短く息を吸ったような気がした。

「確かに私は悠に迷惑ばかりかけてます。そんな私をありのまま受け入れてくれる悠を自分から手放すことはできません。」

「それはあなたのエゴでしょ?」

そんなの私だって重々承知の上だ。

だけど私には悠が必要で。

悠が私を好きでいてくれる間は。

絶対に手放したくない。

「そうですね。だけど悠が私と別れたいと言った時には、あっさりと身を引くつもりです。」

「本当、ムカつく。あんたみたいなのが一番嫌い。」

最後にそう毒突いて、奥に消えてしまった。

その背中を見送った後、椅子に崩れるように座った。

一気に緊張が解け、力が抜ける。

何かどっと疲れた。

まだ心臓が嫌な音を刻んでる。

ふうっと息を吐き出して心を落ち着けた。

奥から悠が出てきたのが見えて、私も立ち上がる。

そのまま何事もなかったように家に帰った。
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