笑顔の裏側に
その日は泊まらずに帰った。

帰って一番に向かうのは自室。

オルゴールを手にして、ベットに腰掛ける。

こうしてオルゴールを見つめながら、心の中で悠に話しかけるのが日課になりつつあった。

何も知らずに傷つけてごめんね。

酷いこと言ってごめんね。

守られてばかりで何もできなくてごめんね。

今日のお母さんからの話を受けて、謝り続ける。

守ってくれてありがとう。

ずっとそばにいようとしてくれてありがとう。

愛してくれてありがとう。

感謝の気持ちも祈るように伝えた。

伝えたいことを全部吐き出した後、ぜんまいを回す。

包み込むような優しい音が心を落ち着かせてくれる。

音が止まって、もう一度ゼンマイに手をかけた時、ある違和感を感じた。

もらった時にはきちんとはまっていたプレートが少しズレていた。

きちんとはめようと指で掴んだら、プレートが外れて、カーペットに落ちてしまった。

壊してしまったと慌てて、プレートを拾う。
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