君までの距離
凪   裕也side

目が覚めたら腕の中はからっぽだった。



ゆっくりと部屋を見渡すと脱ぎ散らかした服がなくなっていた。

慌ててシャワーを見ると使ったあとがあって、ほのかに温かいそこには人の姿はなかった。



書き置きもない

アドレスも知らない……



ベットに戻って座るとぎしりと軋んで沈みこむ。



普通逆だろ。

公演が掃けたあと、高ぶる気持ちのまま出待ちをしていたファンの子を抱いたことがある。

自分のことを好きで堪らない、その子はそう言った。

夢みたいだって言いながら、赤い唇を歪ませて笑った。



自分の一部分しか知らない薄っぺらい感情。壊してしまいたいほどの悪意が湧いた。

強引に服を脱がすと、戸惑いながら嫌がる姿にまた頭にきた。



俺の、何を知ってんの?

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