カテキョ。

 
「お通夜が始まるまで、ちょっと外いかない?」

あたしはそんな気になれなかったけど、周りには知らない人ばかりで、彼に着いていくしかなかった。


「俺…昨日一緒だったんだよね。」

近くの公園のベンチに2人で座って、彼は煙草に火をつけて、遠い眼をして言った。


「……えっ?」

あたしはびっくりして彼の顔を覗きこんだ。
きっと彼は涙を見せないようにしていたんだろう。
歯を食いしばり空を見上げていた。

沈黙が続くなかであたしは我慢しきれず聞いた。

「あの……、昨日何があったんですか?」

あたしは何が起こったか理解出来ていなかった。
あたしの問いに彼はしばらく黙っていた。

そのせいで、また沈黙が続く。

しばらく沈黙が続いた。
その時間が、ものすごく長く感じた。

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