芹沢くんの秘密。



平和です。とか言ってみたものの、実はちょっと平和ではなかったんだった。


芹沢くんと、図書館で気まずい感じになって以来一度も会ってない。

まあ、会う機会がないから仕方ないんだけど。
だからこそ、もやもやしてしょうがなかった。


今日の企画はこれで終わり。



図書室、行ってみようかな。


いるわけないけど…


気分転換くらいには、なるよね?

今日、金曜日だし。



8月に入って、さらに温度が上がり、廊下に出るだけでもだるくなる。

だけど、図書室へ向かうこの瞬間だけは、違った。


『閉室中』と書かれた札の下がる扉を空けると、当然のように誰もいない。

そして、いつもよりもさらに静かだった。

なぜか、この中は廊下よりも涼しい気がして、とても居心地がいい。


誰もいなかったけど、しばらくここで休憩しよう。



「…あ。」



そこで目に入ったのは、あの席。



いつも芹沢くんが座っていた席だ。


無意識に足が動き、座ってしまう。



「なるほど…。」



思わず、呟く。


窓際のその席は、ちょうど外の木の影になっていて、日差しが遮られているけれど、かすかに木漏れ日が届いて、キラキラと綺麗に光っている。


木の葉の間から見える空やグラウンドも、すごく素敵だ。


思わずふふ、と笑ってしまう。

芹沢くんらしいや。





そんなとき、想っていた相手の声が聞こえた。



「ちょっと、そこ、僕の席なんだけど。」



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