椎名くんの進級
痴話げんか
 下世話な話で盛り上がっていると、廊下へ通じる前室の引き戸が勢い良く開く音がした。うっかりしていた。先輩達がまだ舞台に残っていたんだった。俺達は慌てて雑誌をそれぞれの鞄の中に隠す。
 前室で、慌てて荷物を整える音が聞こえる。原先輩だ。次の予定があったのを忘れていたらしい。大慌てで鞄のチャックを閉じ肩に背負う気配。もう一度ドアの開く音がした。

「間に合うのか?」
神井先輩の声だ。
「いや、もう遅刻は確定。ごめん、戸締まり頼むよ。じゃあ、お先。」
「気をつけてね。また来週。」
大野先輩の声もする。
「ああ、また月曜に。」
原先輩の声と走る足音が遠ざかる。

なんとなく、後ろめたくて誰もが無言で息を潜める。ドアの向こうの大野先輩と神井先輩の様子を伺っていると、先輩達が痴話げんかを始めた。

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