椎名くんの進級
 さっきから高橋が大人しい。ふと目をやると、会話に飽きたのか、椎名の鞄の中から、勝手に本日のメインを出して見はじめていた。

「あ、てめぇ。何を勝手に。」
「椎名ぁ。これ、大野先輩に似てるのって、どの写真のこと?」
「あれ、分からない?後ろの方の白い下着のやつ。」
「白はいっぱいあるよ。ねぇこれ、俺が先に借りてもいい?」
「だめ。俺が先約。」
そこは譲れない。
「俺が持って来たヤツ、貸してやるからさ。」

高橋が鞄を投げてよこす。中をあらためるとエッチ系の漫画雑誌が入っていた。
「2次元かよ。」
「だめ?俺、漫画のほうが抜けるんだけど。」
「確かに、多少、筋があるほうが良いよな。」
藤沢が同意する。
「この手の漫画はちょっと。小説のほうがまだしもだ。」
「写真だって2次元じゃないか。」
「そういう問題じゃない。」

「妄想って点ではどっちも似たようなもんだろ。」
「全然違う。それにこの不自然なデカパイが気持ち悪くて。絵的に美しくないだろ。」
「貧乳とかロリも載ってるよ。」
「だから、そういう問題じゃないんだって。」
「織田はどっちかっていうと清純派嗜好だよな。」
「そういうわけでもないんだけど。やっぱ何にでもちょうどいいサイズってのがあるじゃん。」

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