椎名くんの進級
「ああ、きっと可愛くて、面白くて、天然で、毒が強いぜ。」
「演劇部の裏方にわざわざ入るような子だもんな。」
「絶対、お前好みの変な女だよ。」
「俺の事、椎名先輩って呼んでくれるかな。」
「そんなの当たり前だ。でも、図面の引き方を教えてやるのは俺だからな。」
「うっ。俺だって、教えられないわけじゃないぞ。」
「先輩!ちょっと分からない所があるんです。とか言って来たりしてさ。」
「そっかー。それもありかぁ。。」
椎名の顔が少しニヤける。

「一緒に作業して、『そこ押さえてろ』とか。工具の使い方も教えてやるんだ。『ノコギリはこう引くんだ。』とかさ。。」
「いいな。それ。すげーいい。」
「だろ。」

「新入生歓迎公演の本番、頑張れよ。」
「俺、裏で本棚落とすだけだけどな。」
「俺はビデオ撮るだけだ。もっと意味ねぇよ。」
大道具の仕事はほぼ終わっている。段取りも完璧。あとは本番を待つばかりだ。

「俺達、よくやってるよな。」
「ああ、よくやってる。やりすぎなくらいだ。」
俺達は頷き合って別れた。本番はいよいよ来週だ。

もうすぐ俺達は進級する。


『椎名くんの進級』 おわり

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