坂道では自転車を降りて
俺を描いてるの?
 2学期が始まった。俺は次の公演の脚本を仕上げるために、昼休みには、また図書室へ通い始めた。

 大野多恵は時々やって来る。大抵俺より後に現れて、少し離れたところに席を取る。そして、本棚の間を動き回りながら、画集を持って来て眺めてスケッチしたり、読み物を選んで読んだり、貸し出し手続きをしたり、友達や委員の子と話したりする。
 用が済むと、俺の脚本を覗きに来る。中途半端で見られるのは嫌なので断ると、「だったら早く書いてよ。」と急かす。勝手な奴だ。

 俺だってたまには本棚を巡ったり、本を読んだりする。そういう時は大抵話しかけてくる。でも魂胆は見えてる。脚本の内容が早く知りたいだけだ。今度はクリスマスの夜の話にすると言ったら、「成長してるじゃん」と言われた。去年、俺が上演時期と全く関係ない脚本(というか、執筆した季節をそのまま反映した本。)を書いた事を覚えていたらしい。
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