坂道では自転車を降りて
神井、ちょっと顔かせ。
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放課後、部室へふらりと鈴木先輩がやってきた。
「神井、ちょっと顔かせ。」
二人で中庭を歩く。

「文化祭。見たぞ。」
「俺も見ましたよ。」
「俺達の方は良いよ。あれは劇だけど、劇じゃないから。」
「いや、かなり面白かったですよ。参考になりました。」
「そうか。俺はもう思い出したくないから言うな。」

先輩は不機嫌にあっちを向いた。先輩は少しの間黙っていた。何の話をしにきたんだろう。俺達の舞台の感想を言いにきてくれたのか。それにしてはずいぶん時間が経っている。それにどうして中庭?

間を持て余して、俺は口を開いた。
「そういえば、清水先輩とはどうなったんです?」
「。。。何もない。あいつが何を考えてるのか、全くわからんわけでもないんだが。。まあ、今のところ何もない。」
「キスまでしたのに?」

「あれ!」
鈴木先輩は人差し指を立てて俺を指差した。いや、俺は無関係なんですが。
「あれ、ひでーよな。俺、初めてだったんだぜ。」
「そうなんですか?」
キスくらいもうとっくに済ませていそうにも見えたけど、やっぱり真面目な人なんだなぁ。気の毒に。
「いや、俺は男だし、べつにそんなの、どうでもいいっちゃいいんだけどさぁ。はぁ。」
先輩は大きなため息をついた。俺もつられてため息をつく。
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