坂道では自転車を降りて
本当は川村が好きなの?
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 明かりの消えた階段教室。床に座る俺の横で、川村は仰向けに倒れたまま目を閉じていた。何を言っても反応しない川村に、俺は少しいらだっていた。彼女に頼まれたから来ただけで、俺だってここにいたいわけじゃない。

「じゃあ、俺、帰るわ。」
 これ以上ここにいても仕方ないと判断した俺は、立ち上がりながらそういって、重い扉を開けて帰途についた。やはり川村はやはり動かなかった。

 俺が去ってからしばらくすると、重い鉄の扉が再びゆっくりと開いた。大野多恵が姿を現す。彼女は無言で川村の横に座り、顔を覗き込む。少しの間ためらっていたが、やがて口を開いた。

「川村くん。」

 呼びかけると、川村はガバッと跳ね起きた。信じられないといった表情で彼女を見る。しかしすぐにその表情は安堵に変わった。

「よかった。やっぱり戻って来てくれた。」
「びっくりして。。さっきは逃げて、ごめんなさい。」

 川村は彼女を優しく抱き寄せた。彼女は安心したように目を閉じて身を委ねる。どちらからともなく抱き合って口づけた。映画のラストシーンのように、胸に何かがこみ上げてくる。
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