坂道では自転車を降りて
君が好きだよ
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 いよいよクリスマス公演の当日。授業を終えると、部室に集合した。全員が本番当日の緊張でいる中、あちらこちらでチラチラと俺を見る視線がうざい。自分で撒いた種なので、耐えるしかない。

 着替えて体育館へ移動すると、次第に客が集まってくる。鈴木先輩が清水先輩と一緒に来ていた。あの2人、結局どうなったんだろう。考えてみれば、自分で舞台に立つのは1年ぶりだ。今日は客を見ないようにするのが一番だ。と思っていたら、舞台の裾で川村と鉢合わせてしまった。

「なんで、お前がっ。」
思わずうわずった声がでる。
「悪いかよ。」
睨まれる。こっちも睨み返す。

「あ、僕が頼んだんです。昨日リハーサルで幕間に何かBGMがあったほうがいいって美波さんに言われて。」
音響の高橋が慌てて説明する。
「でも時間も測ってないし、俺だけじゃもうどうにもなんなくて。大野先輩に相談したら、音響は先輩も全然わからないから、川村さん呼べって。いくつか川村さんにも持って来て貰って、今朝ですよ。一緒に作ったんです。」
興奮気味に話す。高橋が川村を慕ってるのがよく解る。
「そういえば、昨日、神井先輩はいませんでしたね。」
高橋は無邪気に言うが、今の俺にはボディブローのような強烈な一撃だ。
「それは、オツカレサマデス。」
思わず殴りたくなるのを、なんとか堪えて、慇懃に言った。
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