坂道では自転車を降りて
バーガーショップで
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「先輩達が探してる本って、この本ですか?」
放課後、生駒さんが本を持って来た。そう、この本だ。彼女が持っていたのか。
「持って帰って良いと思ってて、スミマセン。」
「いや、俺も持って帰って読んだ。構わないよ。もっと早く聞けば良かった。」
「この本に書いてあるような手法で演出しようと思ってるんだけど、俺もみんなも初めてだから、ちょっとみんなにも読んでおいてもらおうかと思って。」

 結局、俺の書いた本が採用され、演出は俺と原でやることになった。原は初めての演出だが、こいつなら上手くやるだろう。生駒さんの本は、俺達の引退までに俺と彼女で練り直して修正し、一応の目処を立てることになった。

「筋と役柄を掴んだら、細かい台詞は覚えなくていいから、その時、言いたい事を言いながら、芝居を進めて欲しいんだ。途中で筋が変わってしまう事も想定してある。」
 初めての試みに、部員達は戸惑いながらも、結構面白がっているようだった。この調子が続けば、良いのができそうだ。

 その日、活動後に俺は原とハンバーガーを食べた。同じクラスで同じ部で、一日中、顔を合わせているようでいて、こうやって2人だけで外で飯を食うのは、ずいぶん久しぶりだった。

「原はさぁ、以前、女の子と付き合ってたよな。どうなったの?」
「付き合ってたって言ってもなぁ。」
「違うの?」
「最初は、すごくドキドキしてたんだけど、すぐに、飽きたっていうか、面倒になって。」

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