坂道では自転車を降りて
キスしてくれなきゃ、許さない

「本当にごめん。機嫌直してよ。ね。」
ハンカチが見つからなかったので、彼女の頭をなで、髪を弄りながらなだめる。細い髪の毛だよなぁ。ツヤツヤだし。絹糸みたいだ。
「やだ。」
「やだって。。。君さ。。」
首を振るとくにゃくにゃの髪がふわふわと揺れる。その内側に紅い目と濡れた頬があるんだろうなぁ。嗚咽を漏らす濡れた唇が見える。参ったなぁ。もう勘弁してよ。

「抱きしめて、キスしてくれなきゃ、許さない。」
「え?」
今、何て言った?キスしてくれって言った?よな。。

「い,今、ここでですか??」
こんな住宅街の路上のど真ん中で?それに俺、自転車にまたがったままなんですが?
「ここじゃなくてもいい。」
すんすんと泣きながら言う。え。。。それって、どこか、キスできるような、人気の無いところに連れてけってことだよな。。マジですか?

「。。。こっ。。この前の公園、行く?」
思わずどもってしまった。彼女は泣きながらこくりと頷く。本当かよ。そんなところへ連れてってなんて言われたら、俺、何するかわかんねぇぞ。無理無理、絶対ダメだって。
「えと、じゃあ、乗って。」
乗せたら、ダメだろ。俺!って言いつつ、欲望には逆らえない。ちょっとだけ。ちょっとだけな。。

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