坂道では自転車を降りて
要ります?要りません?

 公演後は恒例の打ち上げ。これも最後だ。俺達の歓送会でもある。俺は生駒さんに花を貰う事にした。彼女にはがんばってもらいたい。

「時間とるって言ってくれましたけど、、やっぱりいいです。先輩がヘタレだって分かったら、醒めました。」
「ヘタレかよ。。」
今更だ。俺がヘタレなのは、クリスマス公演の時に、分かってた筈だぞ。
「でも、本はもう少し見てくださいね。」
「分かってる。」

 本当に俺はわがままばかりでみんなを振り回した。先輩と喧嘩してばかりだった一年の頃、突然、自分が本を書くと言った秋。それでもみんな協力してくれた。本を書いて演出して、途中で投げ出したこともある。クリスマスのリハでは本当に皆に心配をかけた。それでも、最後の公演まで本を書かせて貰えた。本当にみんなを振り回し続けた2年間だった。ありがたいと思っている。

 多恵は椎名に花を貰うらしい。新しい舞台監督は椎名になった。織田の方が図面は引けそうなのだが、椎名のほうが適任だと彼女は言った。
「みんなを上手く纏めてくれる?椎名くんが纏めたら、きっと楽しいし、強い絆になると思う。」
「俺で大丈夫ですかね?」
「多分ね。」

 彼女が部員全員にむかって挨拶を始める。なかなか馴染めなかった一年の頃。舞台に立ったクリスマスはとても楽しかったと言った。そして4人の素敵な後輩が育ってくれた事に感謝すると言い締めた。
 裏方の彼女の挨拶が終われば、あとはお開きまで少しのはずだ。最後に新部長の山田が締めるだろう。
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