坂道では自転車を降りて

 今年のクリスマスはこれといったイベントはせず、プレゼントも贈らないと約束をしていたが、これくらいなら許してもらえないだろうか。9月の俺の誕生日には彼女はキレイな手作りのカードをくれた。俺のシルエットを切り抜いた切り絵は売り物と見紛うほどの出来映えで、感心してしまった。彼女の誕生日には、彼女に手頃な髪飾りをおねだりされて買った。俺が悩んで時間を浪費するのを見越しての事だ。だが、俺が彼女にプレゼントしたいと思うものが偶然見つかったのなら、プレゼントしない手はない。

 いつ渡そうか。終業式の日かな。どんな顔をするだろう。喜んでくれるかな。抜け駆けだと言ってムクれるかもしれない。その時は、どうやってなだめてやろう。素直に抱き締めさせてくれない温かい身体を無理矢理抱き寄せて、逃げ回る唇にキスをしたら、きっと彼女はあっというまに蕩けて、俺の腕に落ちてくる。ぬくぬく温かくて弾力のある身体を抱き締めたら、思わずため息が出るほど気持ちがいいに違いない。あったかい妄想に頬を緩めながらラッピングしてもらって、通学鞄に放り込み、家路を急ぐ。

 家に帰ると、玄関に小さい革靴があった。あれ?これって、彼女の靴じゃないか?キッチンで尋ねると、母さんが部屋で彼女が待っていると教えてくれた。

「あんたもすぐ帰って来るかと思ってたから、部屋に通しちゃったんだけど。」
「いや、今日は本屋に寄ったんだ。」
「きっと、待ちくたびれてるわよ。」
「どうせ勉強してるんだろうから、大丈夫だよ。多分。」

 今日の彼女は5時間で帰ったハズだ。この雨の中を家から歩いて来たのか。学校で待っててくれたら良かったのに。俺は6時間目を受けた後、駅前の本屋にどのくらいいたかな。彼女は1時間以上待ったんじゃないだろうか。考えながらドアを開けると、座卓にも本棚の前にも彼女の姿はなかった。変だな?トイレか?思いながら制服を脱いで部屋着に着替えようとして気付いた。布団が盛り上がって、、いや、布団に誰か隠れてる。

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