坂道では自転車を降りて

 川村は車を発進させた。俺はただ、赤いランプを見送った。意味のない事をしたと思う。きっとあいつは気を悪くしただろう。でも言わずにいられなかった。未だにこんなに引きずっている自分が情けなかった。
「ほんと、格好悪いな。俺。」

 月が夜空を照らしていた。あの日も月が輝いていた。俺ではなく弟の自転車の後ろに乗って遠ざかって行った長い髪の人。もう会えない彼女を思うと、空っぽだった胸が、押しつぶされて悲鳴をあげる。幸せになって欲しい。そう思っていたはずなのに、いまだに思いが溢れて、焦がれて、嫉妬に狂いそうになる自分がいる。こんな自分勝手で弱い心など、いっそ握りつぶして壊してしまいたい。でなければ、この頭を砕いて、全ての記憶を亡くしてしまいたい。全て忘れてしまえたら、どんなに楽だろう。
 行き交う車のライト。人気の無い歩道で彼女を抱き寄せた夜が、打ち寄せては引いて行く。店の明かりの中へ戻りたくない。このままこの暗がりに融けてしまいたかった。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

おまけはここで終わりです。

では皆様、また会えましたら。


< 874 / 874 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:49

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

アナスタシア シンデレラ外伝

総文字数/11,593

絵本・童話22ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
世界中の誰もが彼女の事を知っているのに アナスタシアという彼女の名を 覚えている者は少ないだろう 美しく素直な娘シンデレラの 短慮で意地悪な義理の姉のひとりと言えば 誰もがわかるだろうか それは本当だろうか?
絡んだ糸 〜真夜中の電話〜

総文字数/2,948

恋愛(オフィスラブ)2ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
物語になりそこなった短いシーン その2 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 「彼氏とかいるんですか?」 尋ねると、彼女は微笑み、静かに頷いた。 僕はいったいどんな答えを期待していたんだろう。 こんな可愛らしい人に恋人がいないはずがないのに。 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 注:不倫に抵抗ある方は読まないで下さい ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
深夜 〜真夜中の電話〜

総文字数/1,389

恋愛(オフィスラブ)1ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
物語になりそこなった短いシーン その1 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 僕の腕の中で眠っている彼女 彼女の鞄の中で電話がなる 今、この電話に僕が出たら、、どうなるかな。 深夜0時に、彼女の傍らに男がいると知ったら、 彼女の夫は、どうするだろう。 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 注:不倫に抵抗ある方は読まないで下さい ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 魅洛さん レビューありがとうございます

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop