甘い恋の賞味期限
*****

「千紘くんのお母さん、ですよね? これ、入院の案内です」

「え? あ、私は……まぁ、いいか」

 病院の受付の女性が、数枚の用紙を持ってきてくれた。入院の際に必要なものや、費用などが書かれた紙だ。女性は誤解していたようだが、わざわざ意地になって否定するほどのことではない。
 千世は黙って、受け取ることにした。

「あの、売店はどこにありますか?」

「1階にありますよ」

「ありがとうございます」

 女性はにこやかな笑みを浮かべて、立ち去っていく。

(何か買ってこよう。千紘にも、何か食べさせたほうがいいんだろうけど……)

 持って来た自分の荷物から、財布を取り出す。今更になって気づいたが、お昼を食べていない。

「私、売店に行ってきます」

「…………」

 静子はずっと、だんまり。
 この重苦しい空気は、正直、鬱陶しい。逃げ出す意味も込めて、千世は席を立つ。

「じゃあ、行ってきますね……って、痛っ」

 病室を出て行こうとしたら、誰かが外にいたらしい。思いっきりぶつかってしまい、ちょっと鼻が痛い。視線を上に上げれば、そこには見覚えのある顔があった。

「せーー!」

 咄嗟に、千世は自分の手で自分の口を塞ぐ。

(な、なんでここに専務がっ?)

 いや、理由なんてひとつしかないじゃないか。
 千紘の父親は、彼ーー間宮グループの専務取締役、間宮 史朗だと言うことだ。

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