絶対主従関係。-俺様なアイツ-
「なんだよ、なんかあんのかよ」

「………別に」

 ふわり、と生温かい風が理科室を抜けて、あたしはもう一度手元に視線を戻す。


「なんだよ、そのバカっぽい顔」

 いちいち気に障るわね。

馬鹿にしたようなミカドの言葉に、あたしは観念して乱暴に口を開いた。


「……講堂に行きたかったの!」

「はぁ?」


 ほらね。

予想通りの反応に、あたしはヤケになった。


「有志の出し物に友達がでるの。……約束、したんだけどね」

「そりゃ、残念だな」

「……まあ、もともと無理だったんだよ…」


 お店を思えば、どう考えたってあたしが抜けないほうがいいに決まってるもん。


 薄ジミ程度になったシャツをパン!と伸ばし、窓の光に照らす。

あともうひと頑張りというところだろうか。


ふと、気付いた背後が揺れ動いた気配。


「……ったく」

 面倒そうなミカドの声がしたと思った瞬間、あたしの手首はくるりと引っ張られる。

そのまま傾いた身体に抗えず、目の前では、さらさらと流れるように漆黒の毛先を揺らしていた。


目を奪われるほど、その瞳は強く……どこか柔らかく。


「いくぞ」

「えぇっ?」

 手にしていたシャツが、ぽちゃんとためていたバケツの中に入ってしまった。

せっかくあとちょっとなのに。




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